リノベーションとリフォームはどう違う?リフォームを選択すべきケースとは
日本の住宅市場は新築至上主義といわれて久しいですが、古い建物に手を加えて大切に住む、という価値観も徐々に浸透してきています。リフォームとリノベーション、どちらも似たような意味に思われますが、違いを知っている人は少ないのではないでしょうか。両者の意味の違いと、どちらを選択すればいいのかを解説していきます。
リノベーションとは
リノベーションとは、既存の建物に対して大掛かりな改修をほどこし、それまで以上の価値をプラスするための工事です。たとえば、家族構成の変化による間取りの変更や、家事動線向上のための水回りの移動などが挙げられます。建物を骨組みだけの状態にする、スケルトンリフォームと呼ばれる工事であれば、設計の自由度は非常に高くなります。リノベーションは、既存の間取りや内装、設備にとらわれないので、住む人のライフスタイルや嗜好にぴったりと合った住まいを作ることができます。
リフォームとは
リフォームとは、経年で劣化した内装や設備を、元の状態に戻すために行う工事です。不具合がある箇所への、部分的、表面的な処置ともいえます。たとえば、フローリングや壁紙の張り替え、洗面所やトイレの設備交換、外壁の塗り替えなどが考えられます。新しい価値をプラスするというよりは、新築当時の状態に戻すこと、つまりは原状回復が目的となります。
どちらを選択すべき?判断基準とは
住まいの改装を検討している場合、リノベーションとリフォームどちらを選べばいいのでしょうか。それは、家族構成やライフスタイル、予算など個々の事情によってさまざまです。どういう場合にどちらを選択すればよいかを、例を挙げながら見ていきます。
■間取りを変えたい場合はリノベーション
まずは、既存の住まいに手を加えるパターンです。子どもが成長したので個室を与えたいなら、一部屋増やす必要があります。反対に、子どもが独立して部屋が不要になったなら、一部屋減らしてリビングを広くすることもできます。昨今は在宅勤務も普及してきているため、仕事に集中できる書斎を作りたい、といったニーズもあるでしょう。
このように、家族構成やライフスタイルの大きな変化があった場合、家族全員が快適に住まうために、大幅な間取りの変更が必要になることがあります。大規模な間取りの変更はリノベーション一択となります。
■物件選びにおいて立地が最優先の場合はリノベーション
次に、新しく住まいを探すパターンではどうでしょう。駅近へのこだわりや、仕事や学校に通いやすい立地、気に入っている街に住みたい、など、立地を重視した物件選びをする場合、リノベーションが向いています。立地にこだわると、当然、住まいを探すエリアは限られてきます。タイミングよく、希望エリアに売出し中の新築物件があることは稀でしょう。新築物件が建つのを待つ、というのも現実的ではありません。
その場合、新築物件にこだわらず、中古物件を購入してリノベーションすることを視野に入れると、物件選びの選択肢がかなり広がります。理想の住まいがある場所に引っ越すのではなく、住みたい場所に理想の住まいを作ることができるのがリノベーションです。物件選びにおいて、立地を最優先に考えている場合は、リノベーションが向いているといえます。
■費用を抑えたい場合はリフォーム
リフォームは部分的、表面的な改修工事のため、大規模工事となるリノベーションと比べると、費用を抑えられます。一般社団法人住宅リフォーム推進協議会が平成21年2月に公表した、住宅リフォームに関する消費者実態調査結果報告書によると、実際にかかったリフォーム費用の平均は356万円です。
一方、リノベーションをトータルでサポートする「リノベる。」(リノべる株式会社運営)によると、「リノベる。」の事例においては、60平米のリノベーション費用は1,000万円台から1,600万円台となっています。調査対象が異なるので単純に比較はできませんが、リフォームとリノベーションではかかる費用に一桁の違いがあります。リノベーションができるほどの予算がない場合は、費用が抑えられるリフォームを選択し、生活の不便を最低限は解消するという方法がよいでしょう。
■工事期間を短くしたい場合はリフォーム
リフォームとリノベーションの工事の規模の違いは、工事期間にも影響してきます。工事完了までの日程がタイトな場合、工事期間が比較的短いリフォームが向いています。大規模な工事になるリノベーションと比べて、リフォームは部分的、表面的な工事のため、工期を短くできるのです。工期の短長は、先ほどの費用にも関わってきます。建物の大規模な改修をするリノベーションの場合、そこに住みながら工事を進めることはできません。
一方、リフォームで住宅の一部を改修する場合、工事中もその家に住み続けられる場合が多くあります。つまり、工事中その家に住むことができないリノベーションの場合、仮住まいを手配する必要がある一方で、住みながら進められることが多いリフォームでは、仮住まいが不要な分、費用をカットできます。一旦転居の必要があるリフォームであっても、工期が短いほど仮住まいの費用は抑えられるため、リノベーションよりリフォームの方が経済的です。
リフォームもリノベーションも、そこに住む人のより快適な暮らし、ひいてはよりよい人生を叶えるための手段、ということは共通しています。そして、設計の自由度、工事期間、費用など、それぞれにメリットデメリットがあることも事実。それらを踏まえて、家族構成、ライフスタイル、予算など自身の事情に合わせた最適な方法を選ぶようにしましょう。